食品メーカーがシンガポールに進出する時のチェックリスト12
2014/12/17
★STARMARK®代表の林正勝です 外国人と仲間にはmarkと呼ばれています
こんにちは 今日はシンガポールに居ます。31度です。
自民党政権続投ということで、続くであろう円安傾向で、日本経済に貢献するべく
輸出事業を頑張りたいと思います
さて今回は、海外進出をする食品メーカーさんから受ける質問やお答えすることが
ある程度パターン化されてきたのでチェックリストにまとめてみたいと思います
「食品メーカーがシンガポールに進出する時のチェックリスト12」
1,その食品がシンガポールで取り扱い可能か?
まず前提として牛肉の加工品や鶏肉は輸入が出来ません
どの位無理かというと全然ダメです。
「そこを何とか」みたいな依頼を良く頂きますが
シンガポールの場合は例外はないです
牛肉の精肉だといけますが、輸送と保管の問題があります。
禁止項目以外には気をつけないといけない対象としては、
a,パン、米、水など食生活のインフラにあたる食品
精米だと関税が高く、玄米だと関税が抑えられるという例があります
b,特定エリアの食品
現在、福島からの品に制限があります
c,酒、タバコ製品
関税が高く、手続きに余分に手間がかかります
d,ハラル製品かどうか
豚肉、酒が制限が供給先に配慮が必要になります
ラーメン店で、グローバルでの展開を目指す店で
豚骨を避けて、鶏だしを採用しているところがあります
調達、マーケットの可能性の組みあわせから言っても慧眼だと思います
詳しくはJETROのシンガポールのページでご確認ください。
2,保管温度帯
後の項目とも関連しますが、商品の保管の温度帯が、常温か冷蔵か冷凍かで
輸送や倉庫の設計に関わってきます
例として、常温商品であっても輸送がドライコンテナの場合70度近くまで
温度が上がります。その時に大丈夫かはテストしてみないとわかりません。
冷凍商品は、シンガポール内の輸送にやや不安があります
冷蔵商品は、バリューチェーンの中で、スペースが取り合いなので安定輸送と保管が大変です
3,サイズ、重量
考えられる組合せは当たり前ですが4通り
a,重量が軽く、サイズが小さいもの
b,重量が軽く、サイズが大きいもの
c,重量は重く、サイズが小さいもの
d,重量が重く、サイズが大きいもの
輸送、保管、に効いてきます
商品選定をする際に効いてきます
4,保存期間
これはとても大事です
温度帯、輸送方法、事業計画すべてに関わってきます
保存期間2週間を割るものは、基本、空輸以外成り立たないので、
自ずと、サイズが小さく、重量の軽いものかつ高単価に限られます。
例えば、高級寿司店の築地直送ネタ他が具体的に挙げられます。
保存期間が長いものは、流通設計や事業計画に「幅」を持たせられますが
在庫の管理を伴う為、財務上バランスシートのコントロールが必要になります
5,日本からシンガポールへの輸送方法
【方法】空輸、海運 × 【温度帯】常温、冷蔵、冷凍 × 【分量】まるごと貸し切り、小ロット
この組合せになりますが、事業計画や保管温度帯とも関連してきます
分量を多くすれば、貸し切りに出来て、輸送コストは下げることが出来るのですが
在庫を持つことと同じになります
また通関時に税金も支払う必要がありますので、リスクが先行します
分量を小さくすれば、リスクは全体としては下がりますが、
営業展開に限界があったり、商品が割高になるため、
何が原因で売れないのかが把握しづらくなる為
「本当の市場価値」を見いだすのが難しくなります。
6,シンガポール国内の配送
これも悩ましいポイントです。弊社で設計するときに意外とココが詰まります。
色々な業者さんが頑張られているのですが、需給のバランスがあっておらず
特に、冷凍、冷蔵に関しての小口配送のコントロールは難しさがあります
現状は常温であれば大口小口共に安定しています
7,倉庫
シンガポールは、そもそも港湾都市ですので、倉庫は沢山あります。
シンガポール国内向けのみならず、ハブ都市として、近隣諸国へと配架されていく
予定の貨物が置かれていたりします
温度帯としては、
a,常温 35度くらいまで上がる
b,エアコン 26度前後
c,冷蔵 小口ありません
d,冷凍 小口ありません
小口冷凍倉庫が探せなくて、自社で購入した資材で運用をしたりしています
冷凍、冷蔵のシンガポールの業者様が万が一いらっしゃったら探しきれなかったので
是非ご連絡を頂けますと幸いです、という位、小口に対して厳しい環境です
「日持ちですか?あー冷凍だったら3ヶ月はあるんで大丈夫ですね?」
というお客さまもいらっしゃいますが
実は、日本>シンガポール>シンガポール国内>倉庫 というバリューチェーンを完璧につなぐには
それなりのボリュームが必要になってきます。
8,通関手続き
弊社は、インポーター、エクスポーターを、シンガポールと日本の法人で分担していますが
輸送の設計や倉庫管理を検討するだけではなくて、通関のタイミングや費用を事業計画に
盛り込まないと少しずつズレていきます。
地味な作業なのですが、都度必要になるので、1回で大きく輸送をしたい衝動にかられますが、
在庫が増えるので簡単には出来ませんし、逆に、頻度を多くすると、株式取引と一緒で通関の手続きで
出し入れごとにちょっとずつ利益を食われるという地味だけどバカにならないダメージがあるので、
設計の時に丁寧に考えるポイントの1つです
9,商品選定、品目数
上記の「前提条件」を踏まえて、自社の商品どの商品がふさわしいかを選定します
この段階ではまだ「足切り」ということで、当てはまらない商材を外していきます
輸送や倉庫保管の合理性を追求すると品目数は減らさざるを得ないのですが
商品力がない場合は、営業が詰まってしまう原因にもなります。
弊社でお預かりする品目は3-5品目が中心でこれ以上はなかなか
「事業」としての意味合いで成立しないことが多いです。
ここから後半戦です
10,ターゲット
人種と所得の組合せになります
所得に関しては、月収10万円までの肉体労働層とその他の層の2つに分かれますが
日本からの食品が、肉体労働層をターゲットにして成立する場合が少ないので一旦、人種のみを考慮します。
a,シンガポール人
b,シンガポール在住日本人
c,ムスリム系
d,その他
bについては、海外の日本人マーケット(概要データ付き)で書きましたのでご覧ください
cについてはハラルを配慮する必要があります
マレーシアで事業展開をされる恵島さんの書籍が参考になります
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11,マーケット調査
商品としての需要がどの位あるのか、競合がどの位いて
どのような製品、価格、宣伝でやっているのかを調べるのは
重要です
私がお客さまに例としてお話するものに、お醤油の話があります。
日本ではお醤油の選択肢は多様で
醤油蔵の多くは老舗さんであり
熟成を経た醤油の旨味や奥深さは
素晴らしい日本文化の宝だと思っています
しかしながら、海外市場では、
日本代表キッコーマンが一般向けも業務用も頑張っており
醤油とは程遠い、塩、水、着色用のカラメルという
黒いだけの醤油風液の類が安いボリュームゾーンを取っています。
刺身醤油から卵用醤油に至る多彩な高級醤油群が
ターゲットに出来るマーケットは、海外日本人100万人とあと僅か、
ということになります。
100万人がまとまっていればいいですが、ロスに10万人、シンガポールに3万人という分散状況ですから
効率からいくと、日本市場が良かった、という話になりますが、円安で仕入れが圧迫、マーケットが縮小という背景で
皆様海外を目指されるので、袋小路に陥ってしまいます。
手としては、甲:マーケットを変える 乙:商品開発、ということになりますが、シンガポール向け商品開発、
商品ローカライズついてはまた別の機会に譲りたいと思います。
この段階まで絞りこんで残っている商品がある会社さんはグローバル市場にすぐ出た方がいいと考えています
12,事業計画
ようやくチェック項目の最後です。
1〜11の間でバランスを取りながら事業計画を立てます
B/S、P/Lからキャッシュフロー、為替の変動など悩ましい要素は沢山あります
どの位売りたいか、ということが明確だと事業計画が立てやすいです
撤退する例で多いのが
「まぁ取りあえず売ってみてよ」というお話ですが
成功失敗の尺度もないですし、テストマーケティングの「テスト」の為の指標もない場合
往々にして「なんとなく上手くいかないから」やめるということが多く見られます
「絶対ここまで売るんだ」という意志が明確な場合
我々もそれに対して、具体的に策を提案出来ますし
無理な場合は、そこも含めてアドバイスすることも可能です
1年や2年では市場は取り切れませんから
長期に渡って「息切れしない体制」と
「明確な事業目標」を持つことをお薦めします
チェックリストまとめ
1,その食品がシンガポールで取り扱い可能か?
2,保管温度帯
3,サイズ、重量
4,保存期間
5,日本からシンガポールへの輸送方法
6,シンガポール国内の配送
7,倉庫
8,通関手続き
9,商品選定、品目数
10,ターゲット
11,マーケット調査
12,事業計画
項目同士に相関関係があるので、一意に答えを出すのは難しいです
色々なところに相談をしましたが、行政サービスでは情報は頂けますが
当然ながら、提案は頂けませんし、輸送業者さん、飲食業者さん、倉庫業者さんは
それぞれの守備範囲が決まっているので全体にまたがるお話は礼儀としても
あまりなさりません
「日本文化の商社」として★STARMARK®が日々ぶつかる課題の中から
抽出したチェックリストですので、少しはお役に立つと思います
皆様の進出時の検討の一助となれば幸いです
以下宣伝です
グローバルサイト制作 や シンガポールまでの小口配送、現地倉庫とロジスティクス
1万円ではじめられる海外通販をはじめとして
スターマークには、自分たちが海外進出にあたって苦労したことへの解決策を
パッケージにした製品があります
お客様と試行錯誤しながらではありますが、出来るだけ価格のハードルをさげて
多くの企業に海外に目を向けて頂きたい想いで用意いたしました
東南アジア、シンガポール、グローバルの進出をご検討されている皆様のお役に立ち、
日本文化が海外に受け入れられていくプラットフォーム構築をしたいと考えております
リスクを自らとり、機会を創り出し、貢献したいと考えています
日本のよいものを世界へ 世界のよいものを日本へ
伝統のよいものを現代へ 現代のよいものを伝統へ
スターマークは日本文化の商社です
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